日本に戻ってきた香取とたろうが嵐を想い綴る「なまけ日記」
「ムサシ」NY公演 千秋楽の感想です。
2010年07月12日 (月) | 編集 |
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いい夜でした。
「ムサシ」が上演されたリンカーンセンターは、ニューヨークで一番私の大好きな場所。
これは、「ムサシ」のホールDAVID H. KOCH THEATERのバルコニーから右にニューヨークフィルのホール、左にメトロポリタンオペラのホール、その奥にリンカーンセンターシアター(今、南太平洋を上演中)を望んでいます。

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ロンドン、NYバージョンのパンフレットとグッズ。爆!買っちゃった。。。にわか藤原君ファンです。
あ、、このグッズ、チケット入れ?かしら。
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さて、リンカーンセンターの階段を上がって左手のホール。
ここが、今回「ムサシ」が上演されたホールです。
ここは、ニューヨークシティバレエの本拠地で、オーケストラピットがあって(この演目では客席になっていました)、「くるみ割り人形」のときは1トンのクリスマスツリーがステージに立つ高い天井。
そして、客席は5階席まであります。

ここで、「ムサシ」を上演すること、蜷川さんはどのようにお考えかしら?と思いました。実は、ミュージカル「南太平洋」をやっている劇場だとばかり思っていました。
今回は、2階席までしかお客さんをいれずに上演された「ムサシ」。
だけど3回目の公演を終えて、千秋楽を見終わって思うのは、おそらく蜷川さんはどこででもそのパフォーマンスをされるのだろうな、、、ということです。このホールはやりやすいとか、ここはやりにくい、、、とかではないのでしょう。だってシェイクスピアの時代はきっと野外劇場でだって演劇というものは上演されたのでしょう?
そんなことは、きっと蜷川さんはおっしゃることはないんだろうな。。。今はそう思います。

たしかに、1,2回目までは聞こえない台詞もありました。1回目は2階右側の席。どうしてもそちらに背を向けられると台詞が聞こえない。2回目は、オーケストラ席(1階)の左側の席。こちらもやっぱりそっち側で台詞を言うことが多い藤原君の声が聞こえにくかったです。
そして、楽日は、自分でも驚いたけれど、どセンターの前から4列目でした。これは、超よくわかりました。
ほんとにこのお芝居のこと、よくよくわかりました。
よいお芝居でした。

まぁ結局、土曜日の夜ということで、1,2回目に見たときとは違って日本人がいっぱいでした。だから、笑いのツボもみんな押さえてた。平日に見たときは、アメリカ人、、、そこ笑うところちゃうでしょう?ってところで笑っていましたから。
おそらく、白石加代子さん辺りの表情の作り方や動き、、、こういうところと、訳もきっと完璧に日本のメンタリティまでは伝え切れていないだろうし、、で、そういう笑いになっていたんでしょうね。

さて、ストーリーは、巌流島の戦いの6年後。
実は生きていた小次郎が、ムサシを探し出しもう一度フェアな戦いをしたいと「果たし状」を突き付けるところからスタートします。
場所は、鎌倉の小さなお寺。そのお寺開きに集まった人達と、ムサシ、小次郎の物語です。

とにかく戦いたい。
相手を倒したい。
自分の流儀で、美しく殺したい、そのためなら相打ちもいとわない。
そう意気込んで剣を抜くムサシと小次郎に、そこに居合わせた面々が手を替え品を替え、、、殺し合うことの不毛さを説いていくのです。
なんとかして「斬り合いをおやめください。」「どうか戦わないで。」と、あらゆる方法を駆使して、この二人の剣客を説得しようとするのは、実は過去、無駄に命を落としてしまった亡霊達でした。
「うらめしや~~。。。」という古い方法は使わずに、生きている方達がお好きな芝居仕立てでなんとか伝えたいというのが彼らの願い。
そして、その願いをふたりに聞き入れてもらえたら成仏ができる。なんとか私達を成仏させてください。。。

たったひとつの命をいたずらに捨てないでください。
殺さないで、
死なないで、
生きて、
大切にして。。。
亡霊達はふたりに伝え続けます。

そして、ムサシと小次郎はとうとう構えていた剣をさやに収め、帰り支度を始めます。
そこへ
「ありがとう」と口々に言いながら去っていったはずの亡霊達、お寺開きに参加していた人々が戻ってきます。

「さぁ、これから大切なお式が始まりますよ。ムサシさん、何処へ行かれるのですか?」と聞く人々。
そして、「あら、、、ムサシさん、この方は?」と小次郎の顔をしげしげと眺める人々。
その人々に向かってムサシは答えます。

「友人です。」

小次郎がムサシに歩み寄り「身体をいとえよ。」と別れの言葉を伝えます。
ふたりは、ステージのふたつの階段からそれぞれの場所に向かって歩き始めます。

故井上ひさし氏自身が「これは、私の遺言状」と言ったという蜷川カンパニーへの書き下ろし作品。
「ムサシ」

大切なことは「報復の連鎖を断ち切る」こと。
そして、憎しみ合っても何も生まれず、人を殺すのに決して理由などない。
たったひとつの命を、絶対に無駄にしてはいけない。。。
そのことを、3時間のお芝居の中でずっと伝え続けます。
さぁ、これがアメリカ人にちゃんと伝わったでしょうか。

ほんとに、素晴らしいお芝居でした。そして、楽しかった~。
藤原君と勝地君の素晴らしいこと。
藤原君のどっしりとした、何にも動じない表現と、この再演に向けて新メンバーとして加わった勝地君の蜷川氏曰く「野良犬のように険しい」表情。

そして、杏ちゃん!
彼女がパンフレットの中で「発声を何度も直された」と書いていました。
感情で表現するのではなく、「伝える」ということを何よりも大切にするために、白石加代子さんから多くのことを学べと蜷川さんに言われたそうです。
「白夜」のときに「ツーツーツー!!」って彼女が発したあの透き通るような声。
それだけでも私は天才か!って思ったけれど、天才にさらに磨きがかかり、「感情ではなく伝えるお芝居」をする杏ちゃん、、、、すごかった~~~・・・。
そしてね。
このムサシの看板に彼女の名前はこう書いてあるのですよ。

「ANNE SUZUKI」

まだ子役の頃、彼女が言っていました。いつか世界に通用する女優さんになるために、私はローマ字じゃなくて英語表記で「杏」という名前を書くんですと。。。
この名前を「ムサシ」の看板やプレイビルで見たとき、ちょっとぐっと来ました。

すっかりドラマとかでは見なくなった藤原君や杏ちゃん。
こうやってここで、鍛えられて大きく成長していたんですね。
こちらのフジテレビで、この公演のインタビューがあったのです。このホールのたぶん2階のロビーで。
そのときに、藤原君と杏ちゃんが、井上ひさし氏の家にまで行って、脚本をもらったときの話なんかをとても仲良さそうに目配せしあって話してるのを見て、、、なんか超、、、超、、、幸せになった。
この子達、同志なんでしょうね。

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(「ムサシ」の看板は、ナッツクラッカーの隣にある。。。ニューヨークだな~~。。。光って見えない。。)


それから、蜷川さんのインタビューもすばらしかったです。
「ものすごく緊張している」とおっしゃって、
そして、「とにかく、井上ひさしさんの想いをニューヨーカーに伝えたい。」ということ、それから「もっともっといい演出家に成長したい。」という気持ちも語られていて、うわ~~~すごいと思いました。
そして、彼の目指すパフォーマンスは
「全てのお客さんの望むことを満たすことのできるものが、よい作品だと思う。私はそれをいつも目指して演出しています。」だそうです。

いや、それにしてもすごいもの見た、、、って感じです。

役者さんってなんて尊いお仕事なんでしょうね。
この世界にはたくさんのお仕事があって、そしてたくさんの人が誰かのために働いている。
だけど、この役者さんっていうお仕事に出会った、あのステージ上の人達のきれいな顔。。
ちょっと、藤原君なんか見てると「神がかってる。。。」って思っちゃいます。
Tシャツとジーンズの彼、
金髪の杏ちゃん
その間に立つ勝地君。彼にプレッシャーをかけない、、、というのが藤原君の今回の思いだったそうです。
楽のカーテンコール。
ステージ中心に藤原君と勝地君が両側から走ってきたとき、藤原君がなにか勝地君に言った。
ふっと、「痩せた野良犬みたいだった」勝地君が笑いました。
やり遂げたってことなんでしょうね。その笑顔は。かっこよかったわ。。勝地くん。

2回目のカーテンコールでは、藤原君と勝地君が舞台の袖に駆けていって、蜷川さんをステージに引っ張ってきました。
その手には、故井上ひさし氏の写真が抱かれていました。

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ホールに入るとまず、井上ひさし先生の笑顔の写真が私達を待っていてくれます。
このニューヨーク公演に同行されることを、とても楽しみにしていらっしゃったそうです。

「本公演を追悼公演として、先生に捧げます。」
こう、英語と日本語で書かれていました。
「先生、お写真撮らせてくださいね。」と小さい声でお話しして撮らせていただきました。
このニューヨーク公演のことを、ここで紹介させてください、、、ってお願いしました。

あ、、それにしても。カーテンコールが短い。
2回目のあとにはけていった役者さんに、私達スタンディングで拍手を送っていました。
蜷川氏は、会場中のひとりひとりのお客様をステージから見ていらっしゃいました。そして、藤原君に肩を抱かれて退場されました。

そして、すぐ客電が着いた。。。したっけ、拍手止んだし。
あれ?はやっ!!
もう1回あってもいいんじゃない?とか思っているうちにみんなどんどん退場した。
えらいあっさりしてんな~。。。って感じでした。
これは、役者さん達も「あれ?」って思っただろうな。。。すみません。ニューヨーカーも在米邦人もオタクじゃないんで、執拗に拍手をしませんでした。
私の前にいかにも遠征組の女の子が3人座っていたけれど、彼女たちも「あら?」って感じでした。

昨日は客席に大竹しのぶさんが。
私は見てませんが、お隣のお客さんが力強く「大竹しのぶが来てるよ!」って話していたので、ついつい「えっ?」ってその人のことガン見しちゃったし。。。

この間アメリカ人の英語の先生に
「なんで同じものを3回も見るの?」って聞かれたけれど、
だって、生きているんだもの。
昨日のムサシと今日のムサシ。
確実に違うんだよね。
刀を抜いてさやを遠くに飛ばした楽の小次郎。。。
このさやがセットにぶつかって、、、そのセットが袖に消えていくとき、、、あ、、、さやは?もしかしてセットにひっかかって行っちゃった?
これって最後に小次郎がしまわないとだめなのに、、、大丈夫?大丈夫?とか思っちゃった。
だって、楽の勝地くん、、、ちょっと声がかすれてて、もう限界近いです、、、という感じもしたし。
こういうのが楽しいんだよね。演出も少しずつ変わってたりするのが楽しい。
よりよいものを、、、
きっとダメ出しがいっぱいあったんだろうな。
これが「生きてる」ってことなんだよね。

さてと、「ムサシ」よかったです。
いつもながら、ニューヨークに来てくださってありがとう。
蜷川さん、藤原君、勝地君、杏ちゃん。。。それから共演の六平さん始めベテランの役者さん達。

そして、最後に
井上ひさし先生のご冥福を心からお祈りいたします。

コメント
この記事へのコメント
千秋楽を迎えたのですね
こんにちは、香取さま。
もう千秋楽だったのですね。
私はDVDで前のものを見ただけですが、
素敵な舞台ですよね。

日本語の響きで伝えることに意味があるんでしょうが、
ブロードウェイで長くやってもらってもいいくらい、
ちゃんとメッセージがあって・・・、
きっと今回も、本当にたくさん稽古したんだろうなっていう舞台だったらいいなと
そちらの公演を見てはいないのに、
勝手に「思い出し感動?」してしまっています。

カーテンコール、またアメリカはちがいますものね。
でも、私はどちらかというと、
舞台の余韻が楽しめるNYバージョンが好きなので
未だに日本での舞台鑑賞は、慣れませんが(笑)
2010/07/13(Tue) 11:12 | URL  | tomo #-[ 編集]
たった4公演でした。
>tomoさん!!
きゃ~~。。。帰ってきて~~~。。。一緒に見たかったです。
そうだ!!一緒に見たかったね。この舞台。
来月はね、平井堅が来て、9,10月には赤西仁くんが来てくれるということで、、私的には嬉しいですが、すっかりこっちのミュージカル見るの忘れそう。。。実際、忘れています。爆!

いいお芝居でした。
蜷川さんはむずかしい。。。って思っていたけれど、わかりやすくて温かい台詞がいっぱいでした。
そして、鍛えられた役者さん達がそこにいました。

去年、一緒に見た慎吾ちゃんミュージカルの千秋楽。
「あぁ、もうみんな帰っちゃうんだ。。。」って寂しかったことをまた思い出しました。今回も、ムサシカンパニーが時差ぼけを抜けるために少し前に来て、そして練習してるんだろうな。。。と思うと嬉しいものです。
tomoさん、ニューヨークに帰ってこないのですか~~~?
2010/07/13(Tue) 20:32 | URL  | 香取 #-[ 編集]
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